造形メモ

これで解決!「何も造形されない」PhotonやMARSで脱落失敗しないZ=0設定とレベリングの方法

投稿日:2020-04-23 更新日:

こんにちは、しげもん(@shigemon1227)です。

「造形が終わったのでフタを開けてみると何も造形されてなかった!」

「説明書通りにやってもうまくいかない!」

「ワクワクして待ってた時間返せ!」

という経験をされた方もいらっしゃるかと思います。

光造形機での脱落失敗にはいくつか原因があるのですが、

第一層目が造形されてない場合はそもそもZ=0地点(造形開始位置)の設定レベリング(水平出し)が失敗していることが多いため、以下の手順で設定することで第一層目の脱落失敗を回避することができます。

一度試してみてください。

何も造形されてない理由

プラットフォームに何も造形されていなかった場合はZ=0地点の設定とレベリング(プラットフォームの水平出し)が正しく行われていない場合が多いです。

Z=0地点とは、造形が開始される際のプラットフォーム初期位置のことです。

Anycubic Photonを始めとする格安LCD機種の説明書にはプラットフォームとLCDの間に紙を1枚挟んでプラットフォームのZ=0地点の設定をする方法が記載されています。

なぜこの方法が主流なのかはわかりませんが(中国のコピー文化なのでしょうか…)、説明書通りのZ=0地点の設定方法だとプラットフォームとバットの間に隙間があきすぎてしまうことがあります

プラットフォームとバットの底面との間に隙間があきすぎた状態で造形開始位置を設定してしまうと、1層目がプラットフォームに造形されません。

プラットフォームにしっかり造形させるためにはプラットフォームとバット底面の間に隙間があかないようにZ=0地点を設定することと、プラットフォームがバット底に対して水平になっている必要があります。

これで大丈夫! 失敗しないZ=0設定とレベリング方法

説明書通りの方法ではありませんが、この方法を行ってから一度も脱落失敗は起きていません。

Photonだけでなく他機種でも同じように設定することで問題なく造形できています。

手順は以下の通りです。

  1. プラットフォームのレベリング用ネジを緩める
  2. バットを付けた状態でプラットフォームを最下部まで下げる
  3. プラットフォームがバットの底面に密着している状態プラットフォームを仮止めする
  4. プラットフォームがバット底面に密着している位置でZ=0(初期位置)を設定
  5. プラットフォームを持ち上げ、力いっぱいプラットフォームを締める

また、Z=0地点とレベリングは上記の工程で同時に設定されます。

今回はPhotonSを使用して作業を行いますが、基本的な作業内容は他機種でも同じです。

①プラットフォームのレベリング用ネジを緩める

プラットフォームを取付け、レベリング用のネジを緩めます。

これでプラットフォームが動くようになりました。

②バットを取付けた状態でプラットフォームを最下部まで下げる

Photonの場合はタッチパネルでTools→MoveZ→家マークをタップすることでプラットフォームがバット付近まで下降します。

あとは下矢印をタップしてプラットフォームがバット底面に密着するまで下げます。

最下部まで下げるのではなく、プラットフォームがバット底面みに密着していればOKです。

③プラットフォームバットの底面に着いた状態プラットフォームを仮止め

この位置でプラットフォームのレベリング用ネジを締めて固定します。

ただし、力強くネジを締めるとLCDに圧がかかってしまうため、この時点では動かなくなる程度にネジを締めます。

④その位置でZ=0(初期位置)を設定

プラットフォームがバット底面に密着している状態でZ=0(初期位置)を設定します。

右下の戻るボタンからひとつ画面を戻り、「Z=0」をタップします。

そしてEnterをタップします。

これでZ=0地点が設定されました!

Z=0地点(初期位置)を設定すると、毎回造形開始時はこの初期位置にプラットフォームが下降して1層ずつ造形が開始されます。

バットに密着した状態を初期位置としたため、隙間があきすぎることはありません。

⑤プラットフォームを持ち上げ、力いっぱいプラットフォームを締める

MoveZをタップし、上矢印をタップしてプラットフォームを持ち上げます

先程仮止めしたプラットフォームを本締めします。

この時かなり力強くネジを締め上げます。

先述の通り、プラットフォームがバット底面に着いた状態で力いっぱいレベリングネジを締めると、LCDを圧迫して破損させてしまうリスクがあるため、

少しプラットフォームを上昇させてからレベリング用ネジを締めて固定します。

これでレベリング完成です。

Z=0地点の設定とレベリングはセットアップの際に1度行えばOKです。

造形毎に設定し直す必要はありません。

もし何度か造形しているうちに造形されない症状が起きたりした際は同様の方法で再設定します。

私の手持ちの機種は全て同様の方法でレベリング設定しており、全て最初に1度設定しただけで1層目の脱落は起きたことがありません。

「サポートしか造形されていない…」場合の対処法

続いて、「サポートしか造形されていない…」という場合の対処法です。

Z=0地点とレベリング設定を正しく行えば「何も造形されていない」という症状はほぼなくなるかと思います。

(ほぼというのは以下の要因で造形されない場合もあるからです…)。

造形途中でサポートしか造形されていない場合は、複数の要因が重なっている場合があるため次の項目に注意します。

  1. サポート材・サポートと本体をつなぐ部分が細すぎないか?
  2. サポート材が少なすぎないか?
  3. 露光時間が短すぎないか?
  4. 室温とレジンの温度が下がりすぎてないか?

サポート材の太さと数

①と②についてです。

サポートは多ければ多いほど脱落失敗を回避することができます。

サポートだけが造形されている場合は造形物本体との接続部分が細すぎると失敗の原因になります。

太く量を多くすることで回避できますが、サポートを付けすぎると造形後のサポート除去が大変になります。

よって、造形物への適量なサポートを付けてあげる必要があります。

露光時間(UV照射時間)

③についてです。

スライサーでのパラメータ設定での露光時間が短すぎるとレジンが硬化が不完全になり、細い箇所は造形されないことがあります。

細いサポートの先端部分が造形されなければ途中でちぎれて脱落してしまうことがあります。

露光時間はレジンによって異なるため適切な露光時間で造形しますが、それでも細い箇所が欠落する場合は露光時間を少し長めに設定することで回避できることがあります。

室温とレジンの温度

④についてです。

レジンは温度が低くなると反応しづらくなります。

同じ露光時間でも温かい室内で造形するのと、寒い室内で造形するのでは造形結果が異なります。

レジンスペックに応じた適温で造形し、レジンの温度が下がっている場合はヒートガン(ドライヤー)でレジンを温めてから造形することで失敗リスクを回避することができます。

ほとんどのレジンでは適温が20度以上になっているため、冬場は暖房のある室内で造形することが好ましいです。

 

その他機械側のエラーやヒューマンエラーも考えられますが、大体失敗する要因は限られているため1つずつ対処することで造形は安定します。

(一度スライスの段階でラフトが浮いていたため何度やっても造形されなかったという凡ミスはやらかしたことがあります…)

参考になれば幸いです。ご覧いただきありがとうございました。

-造形メモ

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