こんにちは、しげもん(@shigemon1227)です。
SUMAOPAI社より2021年1月に発売された小型の光造形機SQ1Xをレビューしていきます。
大阪にある創新テック株式会社が国内正規代理店となっております。
SQ1Xは前モデルのSQ1の改良版となっており、各部がアップデートされています。
(SQ1はHIEHAとSUMAOPAIの2ブランドで発売されておりましたが、ロゴが異なるだけで同一機種でした。今後国内で流通するモデルはすべてSQ1Xとなるとのことです。)
今や国内でも当たり前となったLCDタイプの光造形機の分類で、造形サイズは小さいながらも小型で取り扱いしやすい機種となっています。

2 SQ1から改良されたSQ1X 8.9インチ搭載の中型機もラインナップされている
目次
開封~本体スペック
開封・付属品
段ボールから引き出し梱包材を剥がします。筐体がアルミ製ですので重量はあります。
シャフト上部はねじ止めされているだけですのでここを持つと外れる可能性があります。
足の上に落下させると大変ですので、上部から引き出して取り出す際はリフト部分を持つとよさそうです。
付属品は下記となっております。
中華感満載ですが、使えるものは使う、使えなそうなものは潔く捨てましょう。
どの機種にも言えますが、付属のスクレーパーは安っぽく使えないものが多いです。
オルファのスクレーパーは必須アイテムです。
私の場合、ろ紙や手袋などの消耗品は優先的に使っています。
これまでいろんな機種を使用してきた中で同梱のUSBメモリで不具合が起きたことはありませんが、気になるようでしたら別途買い替えるのもアリかと思います。
本体サイズと外観
本体サイズは幅200×奥行200×高さ300mmとなっており、比較的小型モデルとなっております。
ケーシングは上部に箱状のアクリル蓋をかぶせるタイプです。
「取り外した蓋をどこに置く?」問題はありますが、プラットフォーム・レジンタンク周りが開放的なので作業はしやすいです。
作業しやすいように庫内を広く、蓋を上部展開、などを考えると本体サイズが大きくなっていくのでしょうね。
そもそも光造形機って棚の中段などには置けないんですよ…、この手の機種はかならず上部に空間が必要になります。
ちなみに前モデルのSQ1はアクリルケースがオレンジ色でしたが、SQ1Xより黒色アクリルが採用されています。

前モデルのSQ1X。アクリルの色が変更されました。
光造形機のケーシングはUVカットされるオレンジ色のものが多いですが、室内に置くと浮いた感じもするのでシックな黒色は良いかと思います。
(真っ黒ではなくかすかに透明です。UVは遮られるとのことでしたが、どの機種も日光が当たる場所に設置してはいけません。)
本体重量は6kgです。他機種と比べるとやや重いですが、全体アルミ製ですので剛性はあるかと思います。
アルミのシルバーと筐体のブラック、シャープな作りがかっこいいです。
操作関係は前面のタッチパネルで行います。その横にあるのは電源ボタンです。
SUMAOPAIのロゴシールが貼られています。(SUMAOPAIとは猫好きという意味だそうです)
本体背面中央には大きめの通風孔、USB端子、PCと接続する際のLAN端子、そして電源端子です。
USB端子は2つありますが、どちらも入力端子になっています。
ファンは本体裏側についており、そこから吸気するようです。
各個体にはシリアルナンバーが割り当てられています。
プラットフォームとレジンタンク周辺
プラットフォーム周りもアルミ成形になっています。
造形サイズは115×65×100mmです。基本は2K5.5インチのLCDを搭載する機種と同等ですが、小型がゆえに造形高さは100mmまでとなっています。
レジンタンクは左右のネジでとめられているよくあるタイプです。
タンク自体を取り外す場合はネジを外して真上に引き抜きます。
個人的にこの仕様はあまり好みではありませんが、レジンタンクをしっかりと固定する効果があるのかと思われます(知らん)。
レジンタンク直下にあるのは5.5インチ・RGB・2KのLCDパネルです。
今時のパネルはモノクロのものが多いのですが、本体内部のUV照射パワーが強いためRGBパネルが採用されています。
(光源はパラLEDではなく、パワーLED方式です)
レジンタンク裏側にはFEPフィルムが張られています。交換用のフィルムは1枚付属します。
タンクの角にレジン排出用のミゾが付いています。
レジンタンクの裏側です。
フィルムの張替えの際はネジを外して交換します。
(※初期ロットではネジが柔らかいものが使用されており、ネジ穴が潰れやすいそうです…。そのため、別途で交換用のネジが付属します。)
Z軸シャフト部分はSQ1と共通のように見えます。

シャフト上部にあるセンサー
リフトに突起が付いており、シャフト上部のセンサーに触れることで停止します。
セットアップ(起動)
少し紹介が前後していますがセットアップを行います。
本体正面の電源ボタンを押し込むことで起動します。
ロゴが表示された後、30秒~1分ほどで起動します。
操作はタップしてから一呼吸おいてから次の操作へ移ると良いようです。高速タップで操作を進めると処理が追い付かなくなりフリーズすることがあります。
起動後、プラットフォームが最上部に移動します。
基本的に起動時にはプラットフォームがセンサーまで移動するようです。
ちなみに前モデルのSQ1ではプラットフォームが板状になっており、上部にレジンが乗ってしまう形状でした。
SQ1Xではプラットフォームに傾斜が付いているためレジンのはけはよさそうです。
LCDパネルとUVライトの点灯確認
どの機種においても初回起動時はLCDとUVライトの点灯確認は行っておいた方が良いです。(本機種は国内にて出荷前に確認は行っているそうです)

LCDパネルとUVライト点灯確認工程
ファンのオン・オフボタンがありますが、造形時ファンは自動でオン・オフされますので特に操作は不要です。
グリッド・全画面・境界線をタップしてUVライトとLCDパネルの点灯を確認します。
問題なければ「消灯」をタップします。

LCDパネルとUVライトが点灯すればOK
プラットフォームの水平だし(レベリング)
プラットフォーム造形面とLCDパネル(レジンタンク底面)は平行になっていないと造形ができません。

プラットフォーム水平出し工程
プラットフォームの水平だしは工場出荷時に設定されているため原則不要ですが、
造形がうまくいかない場合や、レジンタンク・FEPフィルムの交換などを行った際に再設定すると良いかと思います。
特に厚さの異なるFEPフィルムに交換した後などはレベリングを再設定しておかないと初期層がプラットフォームに定着しないことがあります。
造形の流れ
SQ1XはAnycubic PhotonやELEGOO MARSといった他機種で使用されているOSとは異なり、NanoDLP搭載機種となります。
よって、他の機種と比べて造形までの工程が少し異なります。両者の工程の違いです。

他機種と本機種の造形までの工程の違い
スライス(造形のためのデータ書き出し)をスライサー内で行うのか、本体内で行うのかの違いです。
どちらの方が効率が良いのかは使用環境や慣れにもよるかと思いますが、SQ1Xの場合、一度STLを本体に読み込んでしまえばあとは本体内部の操作でパラメータの変更が可能です。
「本体に読み込んだSTLデータ」に「本体内部に登録している造形パラメータ」を割り当てるという考えです。
ただし、本体に読み込むSTLデータはサポート材を付けた状態でなければなりません。
よって、サポート材を付けるためにCHITUBOXをはじめとするスライサーをを活用する流れになります。
レジンパラメータ設定
造形するためのパラメータ(1層あたりの厚さ・UV照射時間)をレジンパラメータとして本体内部にプリセット登録します。
設定する各項目一覧です。
- プリセットの名前…登録するプリセットの名前です。(積層と露光時間を入れると便利です)
- 通常層の厚さ…1層あたりの厚さ。単位はμmです。 ※10μmは0.01mm
- 通常層の時間…1層あたりのUV照射時間。単位はミリ秒です。※1000ミリ秒=1秒
- 初期層の数…造形の初期層を何層設定するかの数値です。
- 初期層の厚さ…造形初期層に対しての1層あたりの厚さです。単位はμmです。
- 初期層時間…造形初期層に対しての1層あたりのUV照射時間です。
モデル造形開始の数層はプラットフォームに造形物を固着させるためにUV照射時間を長めに設定します。
この造形初期の数層に割り当てるパラメータが初期層になります。
通常層はモデルの造形1層あたりのパラメータです。
SQ1Xにて純正レジンを使った際の参考パラメータは以下となっています。
- 通常層の厚さ…50μm (0.05mm)
- 通常層の時間…1800ミリ秒 (1.8秒) ~ 2000ミリ秒 (2秒)
- 初期層の数…5層
- 初期層の厚さ…50μm (0.05mm)
- 初期層時間…35000~40000ミリ秒 (35~40秒)
いずれの数値も使用するレジンや造形するモデルによって異なるため、ユーザーによって適宜数値変更は必要になります。
本体へのデータ読み込み(造形データの登録)
サポート材を付けた状態のモデルデータ(STLファイル)をUSBメモリを介して本体に読み込みます。
サポート材の追加は一般のスライサーやCHITUBOXを使用し、サポート材追加後のモデルデータをSTLファイルに書き出すと便利です。
別記事:CHITUBOXを使ってサポート材追加後のデータをSTLファイルに書き出す方法
サポート材追加後のデータさえ本体に入れてしまえば、あとの造形設定は本体内部で行えるところがミソです。
レジンパラメータを一度登録しておけば以降の造形はプリセットを選択するだけです。
テスト造形
本体へ造形データの登録が終われば後は造形するだけです。
今回は純正の水洗いレジンを使用します。良く振ったレジンをレジンタンクに注ぎます。
最近は寒いので暖かい部屋で造形してください(適温は約25~30度)。冬季にどうしても造形失敗する場合などはドライヤーでレジンタンクに入れたレジンを温めてください。
造形する場合は先ほど登録したデータを選択し、造形開始をタップします。
この際必ず立体の画像が表示されきってから造形を開始してください。
操作はゆっくり、タップ後に一呼吸おいてから次の操作に進むと良いそうです。
(※もし画像が表示されない場合は、一度ホーム画面へ戻ってから再度進んでください)
あとはプラットフォームが下降して造形が開始されます。
造形が開始されるとファンが可動します。
ファンの音は比較的大きめかと思います。(寝室で動かすのは現実的ではないかと思います…。)
造形中の様子
あとはケーシングをかぶせて造形の様子を眺めます。
たまにケースを外してリフトが動いているのをチェックします。
造形中の画面は、現在の造形中断面図とレイヤー数、あとは残り時間などの項目です。
(推定終了時間はPC接続時に時計と連動します)
タッチパネルよりファンのON・OFF操作ができるのですが、造形時は必ずファンをONにしてください。
造形音を確認したりする際に一時的にOFFにするのは問題ないようですが、長期的なOFFは温度上昇による故障につながる恐れがあります。
また、造形が終われば自動的にファンは停止します。
造形音の確認時など、一時的に停止するのは問題ありませんが、
再度ファンをONにするのを忘れるという凡ミスを何度か犯しました。
よって、基本的にファンの操作は行わないようにしています。
あとは造形ができるのを待つだけです。
造形後(洗浄~二次硬化)
造形後はプラットフォームが上昇して最上部で停止します。それと同時にファンも停止します。
電源はOFFになりませんが、無音状態で停止するのは嬉しいです。機種によっては造形終了後もファン回転や機械音がする機種もありますので…
洗浄工程のおさらいです。洗浄手順は造形物や環境によって異なる点もあるかと思いますが、大まかな流れは手順表のとおりです。
洗浄の際は手袋着用の上、皮膚にレジンが付かないようにご注意ください。
プラットフォームを取り外し不要なレジンは傾けてタンクへ戻します。
水洗いレジンを使用していますので台所用洗剤の水溶液で洗浄しました。
純正レジンの良し悪しについてはここでは述べませんが、少し柔らかいレジンのようです。
洗浄液での洗浄後、流水で表面を洗い流し、24時間以上乾燥させます。
造形直後や洗浄中は細い部分など歪んでいるところがありますが、しっかり造形後に乾燥させることで元の形状に戻ります。
しっかり乾燥後、UVライトを使って2次硬化を行います。
満遍なく均等にライトをあてることで意図しない反りを防ぐことができます。
造形物
できました!いつものデータです。良い感じで造形はできているかと思います。
1層あたりのUV照射は短いのでエッジはくっきりしているような印象です。このあたりはモデル形状やレジンにもよりますので一概には言えません。
使い方などは他機種と手順が異なる部分もありますが、基本的なプリンターの構造はおおむね同じですので造形されるものもさほど変わりがない印象です。
立使用するレジンによっても造形のされ方に違いはあります。
また、どの部分をキレイに造形したいか、というのはユーザーにもよると思いますのでこの作例はあくまで一例としてご覧ください。
使ってみた感想
SQ1Xを使ってみた感想です。
他機種をいろいろ触ってみた上での比較ではありますので、後発組のこの機種の立ち位置は少し酷かもしれません。
その中での良いところとそうでないところです。
良かったところ
- 小型モデル
- 比較的高速造形ができる
- データのパラメータ変更が楽
良くなかったところ
- 造形サイズ(高さ)が小さい
- 高速造形向けに初期設定されている
太字にしていますが使いやすいと感じたのはデータの登録方法です。
やはり本体内部に登録しているプリセットを読み込んだSTLデータに割り当てれるのは便利です。
今まではテストプリントをして「少し露光時間を長めに変更しよう」といった場合、
再度パソコンにてスライサーを立ち上げパラメータ変更、そして書き出したデータを本体に読み込んでいましたが、本機種ではそういうことはありません。
サポート材が付いたSTLデータさえあれば本体内部でパラメータ設定が可能なところが使い勝手良かったです。
(もちろんこれによって不便な点もあるのかもしれませんが)
また、良かったところに反する内容ではありますが、本体自体が高速造形に初期設定されているため、リフトの速度も比較的早めです。
リフト昇降のスピードは早ければ早いほど造形時間は短くなるのですが、その分造形ブレのリスクもありますので個人的にもう少し速度は遅くしたいです。
リフト速度の変更はもちろん可能なのですが、その設定は本体からではなく一度パソコンと接続する必要があります(毎回パソコン接続ではなく、一度設定すればOK)。
そちらの解説はまた後日行います。ひとまずファーストインプレッションでした!
■SUMAOPAI 3Dプリンター YouTubeチャンネル
(公式YouTubeチャンネルへ動画素材を提供させていただいております)
レビュー動画
後日追加いたします。